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2016/04/08 「国民に判断材料を与えないのは損失よりも悪質だ」〜アベノミクスで年金5兆円が消えた!?――民進党・追及チームが安倍政権の情報隠しを批判

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※4月9日テキストを追加しました!

 「TPPの情報も隠す、年金の損失も隠す。隠す、隠す、隠すの安倍内閣ではないですか」――。

 衆院環太平洋連携協定(TPP)特別委員会が始まった初日の2016年4月7日、民進党の玉木雄一郎議員は、TPP交渉過程の論点を整理した資料を、ほぼ黒塗りで出してきた政府を繰り返し追及した。答弁に立った安倍総理は「守秘義務」を理由に、資料公開の難しさを説明したが、一方では、TPP特別委の委員長を務める西川公也氏自身が、交渉内容に踏み込んだ暴露本『TPPの真実』を出版することが分かり、政府のダブルスタンダードな姿勢が明るみに出た。

 「われわれに示しているのは黒塗りの資料だけだ。しかし本の原稿には、交渉の内情を詳しく説明している」

 翌日8日のTPP特別委で民進党・緒方林太郎議員が問いただすも、石原伸晃TPP担当相は質問に正面から答えず、審議が何度も中断。西川公也委員長の委員会運営に不満を抱いた民進党議員らは途中退席し、緒方林太郎、玉木雄一郎議員らが緊急記者会見を開く事態に発展した。

▲民進党・山井和則議員(左)、玉木雄一郎議員(右)(4月5日国会内で開かれた「年金運用『5兆円』損失追及チーム」で)

 しかし、安倍政権がひた隠しにしているのはTPPの情報だけではない。国民の年金を預かり、管理、運営しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、これまで、毎年7月上旬に公開してきた年度の運用実績を、今年は参院選後の7月29日に公表すると決めた。2015年度は5兆円もの大損が出ていると噂される中、公表日を半月も遅らせたことは選挙対策のためではないのか。「損失隠し」と批判された安倍総理は、「政治的判断で遅らすことは一切考えていない」と答弁したが、公表日を選挙後に設定した正当性を示すことはできなかった。

 7日の国会で玉木議員は「TPPも隠す、年金の損失も隠す。隠す、隠す、隠すの安倍政権だ」と批判いっぱいに質疑を締めくくった。

年金積立金の約70兆円で株を買っている事実を国民は知っているのか?

 2015年度は年金積立金に巨額損失が出ているのではないかーー。

 4月1日、民進党の井坂信彦議員が衆院厚労委員会で、2015年度の1年間で株価が12.7%下がったことの年金積立金への影響について、塩崎恭久厚労大臣に質問。「安倍政権発足後の収益額は37.8兆円のプラス。長期的には必要な利回りを十分確保できている」と反論した塩崎大臣は、年度の損失額については一切触れず、短絡的な動向にとらわれるべきではないと野党を牽制した。

 しかし、問題の本質は運用損益額そのものにあるのではない。

 安倍総理は2014年12月、年金の株式運用の比率を50%にまで引き上げた。それまでは約140兆にのぼる年金積立金の60%を国内債券、11%を海外債券で安定的に運用してきた。しかし、現在は50%を国内外の債券に、残り50%を価格変動の激しい株式市場にゆだねているのだ。

 塩崎大臣のいう「37.8兆円」の収益とは2014年12月以前の話。株式の運用比率を50%に変更する前の数字であり、年金積立金の半分を株に投入するというハイリスクを決断した安倍総理の判断が正しかったのかどうか、その結果が初めて公表されるのが今年の7月。それが、選挙前か選挙後になるのかがここで問われている最大の争点なのである。

 そもそも、年金積立金の半分、約70兆円が株に投資されている事実を、どれだけの国民が知っているのだろうか。株式運用の比率を上げることで出る損失リスク、大損した時の責任について、政府は一切説明をしてこなかった。さらにここへ来て、損失が出ているのではないか?と質問しても、その情報を適切なタイミングで開示しようともしない。そもそも、年金積立金は誰のお金なのか、国民のお金である。

 私たちの老後を最低限保障する年金積立金の半分を株に投資するーー。そのような危険な方法を取っている国は他になく、米国の場合は債券で手堅く運用している。なぜ、安倍総理は危険をかえりみず、不安定な株式に国民の財産を突っ込んだのだろうか。

アベノミクスで運用比率を上げなければ年金損失はゼロだった!?井坂信彦議員が試算

 「アベノミクスによって株価が上がっているように演出するために、国民の大切な年金を犠牲にして、株価を無理矢理上げようとした結果、5兆円もの損失が生じているのではないのか」

 8日のTPP特別委員会で民進党の玉木雄一郎議員はこう安倍総理を追及した。つまり、「5兆円損失」の原因は株価の下落ではなく、アベノミクスの一貫として、年金積立金の株での運用比率を50%にまで上げたからではないか、という見方だ。事実、民進党の井坂信彦議員の試算によれば、もし以前の比率のままであれば、2015年度の損失はゼロだった可能性があるというのだ。しかし、損益額も明らかにしない政府は井坂議員のその試算を否定も肯定もしない。すべての情報は、参院選後の7月29日に開示する、の一点張りである。

▲井坂議員が作成した「平成27年度のGPIF運用損益」

 安倍総理も国会答弁で塩崎大臣と同様、「安倍政権発足後は37.8兆円のプラス」論をアピールするのみ。論点ずらしが否めず、運用比率の変更が妥当だったのか検証する様子も見せない。政府をあげて、まるで壊れたレコードのように同じ答弁を繰り返すだけである。6日、民進党の勉強会に出席したGPIFの担当者は、なぜ、損益額の公表を7月末に後伸ばししたのか、次のように答えている。

7月下旬の公表になった理由、GPIF審議役が驚きの発言「GPIF設立10年のあゆみを振り返りたい」

▲GPIF・三石博之審議役(左から2人目)、厚生労働省・宮崎敦文大臣官房参事官(左から3人目)

 「27年度はGPIFができて10年。10年間のあゆみを振り返り、この10年間、どういう実績であったかを評価したい。また、これまでは市場への影響などを勘案して、保有銘柄を公表してこなかったが、今回は開示する」

 GPIFの三石博之審議役は、損益額の公表が例年より半月遅くなる理由を、GPIF設立10年のふりかえりをするため、と説明。つまり、「国民により丁寧に説明するため、例年より作業時間がかかる」という詭弁だ。そもそもGPIFという組織の「10年のあゆみ」など、国民にとって大した意味を持たない。

 もちろん、丁寧な情報公開につとめればいいが、それが、年度の運用損益の公表が半月も遅れることの理由にはならない。GPIFの職員も塩崎大臣も安倍総理も、誰一人として、7月上旬に公表ができない技術的な理由を示すことができない。出せるのに出さない、「情報隠し」と批判されても反論すらできない。国民にとって、選挙前に情報が開示されない不利益とは何か、井坂信彦議員がIWJのインタビューに応じた。

(取材・文 ぎぎまき)

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